人が亡くなったとき、その人の財産(遺産)は相続人、または遺言で指定された人に分配されるのが一般的ですが、その分配された財産にかかる税金が相続税です。
各相続人等が相続や遺贈などにより取得した財産の価額から、葬式にかかった費用、非課税となる財産、借入金などの債務を差し引いた額の合計額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告納付が必要になってきます。
相続税の対象となるのは、有形無形にかかわらず、一部の非課税財産を除いてほとんどの財産が対象になります。
<相続税のかかる財産の例示>
<相続税のかからない財産の例示>
亡くなった人(被相続人)の財産を相続する人を相続人といい、民法ではその範囲(法定相続人)や相続できる順位、財産の取得割合が決められています。
1 第1順位 子(胎児・養子を含む)1/2及び被相続人の配偶者1/2
2 第2順位 直系尊属(両親や祖父母など)1/3及び被相続人の配偶者2/3
3 第3順位 兄弟姉妹1/4及び被相続人の配偶者3/4
上記に掲げる人以外は相続権を有しませんので、相続人以外の人に財産を相続させたい場合や、特定の相続人に多くの財産を残したい場合には遺言が必要です。例えば長男の嫁に介護で世話になったので遺産を相続してほしいと願うのであれば、養子縁組をして相続権を与えるか、遺言により財産を遺贈する旨を明記しておく必要があります。
なお、遺産分割協議で各相続人が相続することとなった割合が上記法定相続分と異なっていても遺産分割協議で決定した事項が有効となりますが、遺留分について考慮しておく必要があります。
正味の遺産額が相続税の基礎控除以下であれば相続税は課税されません。
相続税の基礎控除額とは、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で算出します。
被相続人に養子がいる場合、『法定相続人の数』に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までと制限がされています。ただし、特別養子縁組によって養子となった者、被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者、実子又は養子の代襲相続人は実子として取り扱うことができます。
相続があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10カ月以内に申告・納付しなければなりません。例えば30年7月11日に相続が開始した場合には31年5月11日までに現金で一括納付しなければなりません。
相続税額が0の場合でも、配偶者に対する相続税の税額軽減の適用を受ける時や、小規模宅地の評価の特例を受ける時など、特例の適用を受けるには申告が必要になる場合があります。
納税については、申告期限までの現金一括納付が原則となりますが、相続財産の大半が不動産や有価証券であるなど、期日までに現金で一括納付することが難しい場合には一定の条件のもとに年払いによる延納とすることができます。
延納によっても難しいときには一定の条件のもとに相続財産で納める物納による方法もありますが、物納は収用要件が厳しくなり、申請件数はぐっと減っています。
また、相続税は各相続人間で連帯納付義務を負うことになる点も注意が必要です。
相続開始後に相続人がすべきことのうち、一番最初に期限が到来するのが相続の放棄や限定承認についての家庭裁判所への申述です。
相続の手法には次の3種があるため、いずれの方法によるかを選択します。
1 単純承認 相続人が被相続人の財産をすべて相続する方法です。
財産の中には土地や有価証券などプラスの財産もあれば借入金などのマイナスの財産もあります。
単純承認をすると、たとえプラスの財産よりもマイナスの財産が多くてもそのすべてを相続することになるのです。
2 相続放棄 相続人が被相続人の財産(プラスの財産もマイナスの財産もすべて)を一切引き継がない方法です。相続の放棄をしても、自身が受取人になっている生命保険金は受領することができます。
3 限定承認 プラスの財産が多いのか、マイナスの財産が多いのか不明な場合、プラスの財産の範囲内で財産を相続する方法です。実務ではあまり一般的ではありません。
2 の相続放棄、 3 の限定承認をするには被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に行う必要があります。
なお、相続放棄は単独で行うことができますが、限定承認は相続人全員が共同して行う必要があり、いずれも申請前に専門家に相談をすることをお勧めします。
※相続財産を隠蔽したり、処分すると相続放棄や限定承認は認められず、単純承認したものとみなされます。
「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」を保管している人、あるいは発見した人はこれを遺言者最後の住所地の家庭裁判所に提出し、その検認を申し立てなければなりません。
検認とは、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、その検認の日における遺言書の内容を明確にすることにより、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きです。
封印のある遺言書の場合は開封せずに家庭裁判所に提出する必要があります。
「公正証書遺言」の場合に検認は必要ありませんが、遺言は一つとは限りません。
公証人役場で「公正証書遺言」と「秘密証書遺言」の検索を行い、どの遺言のどの部分が有効なのかを確認しましょう。
兄弟姉妹以外の相続人には、民法によって遺留分制度が設けられています。
遺言制度によって被相続人の自由な財産処分を認める一方で、各相続人への最低限の保障という意味合いを持つのが遺留分制度です。
遺留分は相続人の態様によって以下の通りとなります。
1 配偶者と子(直系卑属)1/2
2 配偶者のみ 1/2
3 子のみ 1/2
4 配偶者と直系尊属1/2
5 直系尊属のみ 1/3
例えば、配偶者乙と子A,Bが相続人であった場合において、
Aに全財産を相続させると遺言にあっても
乙は1/2×1/2=1/4
Bは1/2×1/2×1/2=1/8
の遺留分をもつこととなり、Aに対して遺留分の減殺請求をすることができます。
当事者間の話し合いによっても解決しない場合には家庭裁判所の調停や審判、あるいは裁判によって決着をつけることになります。
相続税の申告については、納税額だけでなく会計事務所に支払う報酬についても関心を寄せている方が多くいらっしゃいます。
しかしながら、相続税の申告業務を受諾して、財産の一覧を作成し、個々に評価をした後でないと報酬は決定できないという難しさもあります。
萩原会計事務所では遺産総額を基に申告報酬額を決定させていただいております。しかしながら預金だけで3億お持ちの方と土地10筆で3億になる方とでは、申告に際しての業務量に大きな開きがあるため報酬額が同一というわけにもいかず、また農地の納税猶予の申請があるのか、物納申請があるのか、分割協議はスムーズにまとまるのかどうか等、着手して初めてわかることも少なくありません。
従いまして、遺産総額が5億円までの相続で、複雑事案がない場合においては基本料10万円に加え、遺産総額の0.5%を申告報酬の目安としてお考え下さい。